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日経記事;『「炭素繊維車」20年に実現 東レやトヨタ、産学で量産技術』に関する考察 [新規事業開拓・立上]

                2013年6月22日

皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

6月2日付の日経新聞に、『「炭素繊維車」20年に実現 東レやトヨタ、産学で量産技術』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『東レやトヨタ自動車、東京大学などは7月から、軽くて強い炭素繊維を全面的に使った自動車の開発を始める。加工技術などの研究が進み、2010年代後半には量産車向けに部品を供給できるメドが立った。

重量を6割減らしつつ安全性の高い自動車を20年にも実用化する。日本が得意とする先端素材を活用し、環境対応車の国際競争力を高める狙いだ。

炭素繊維は鉄の4分の1の軽さながら10倍の強度がある。自動車に採用すれば、燃費が4割以上改善するという。

部品に加工したときの価格が鉄の10倍以上あるため、採用は一部の上級車に限られるが、米ゼネラル・モーターズが量産車への採用を目指すなど導入の動きも始まっている。

共同開発には、三菱レイヨンや帝人子会社の東邦テナックス(東京・千代田)、日産自動車、本田技術研究所、三菱自動車工業、スズキ、名古屋大学なども加わる。

経済産業省は国のプロジェクトとして支援し、今年度に約40億円、5~10年間で数百億円を助成する。

炭素繊維は原材料づくりや加工が難しいなどの欠点がある。東大と炭素繊維各社はこうした課題を克服する基盤技術で成果をあげている。

東大と名大に設けた拠点で量産用技術を確立し、部品などのコストは現在主流の鉄並みに引き下げる。

鉄を置き換えるだけでは重量は3割しか減らないため、6割の軽量化を目指し、炭素繊維に適した車体や車台を設計する。

エンジン周辺や軸受け部などは摩擦や熱に強い鉄やアルミニウムが有利とされ、用途やコストを見極めながら、炭素繊維の採用が進む見通し。

東レ経営研究所によると、炭素繊維の世界市場は11年で約4万トンで、自動車向けは2000トン程度。15年ごろから拡大し20年代には数万トンになると予測している。』


炭素繊維については、本ブログ・コラムでも何度か取り上げてきました。炭素繊維自体は、米国で開発されましたが、その技術を実用化・商用化までもっていったのは、東レや帝人などの国内企業による地道な開発行為の成果によるものです。

炭素繊維の欠点は、加工のしにくさと高コストです。国内企業は、長年の蓄積された技術でそれらの課題を一つづつ解決してきました。

炭素繊維の利点は、軽くて強いことです。最近、東レの炭素繊維が新型旅客機「ボーイング787」の構造材に全面採用され、軽量化と燃費性能向上に貢献したことは、大きな話題になりました。

炭素繊維の実需を大幅に伸ばすためには、自動車の車体や部品などの素材に採用されることが必要です。
自動車メーカーにとっても、強度を保持しつつ車体を軽くできれば、燃費性能を大幅に向上できるメリットがあります。

東レや帝人などの国内企業は、今まで個別に自動車メーカーと連携して、炭素繊維の自動車への使用について研究・開発を進めてきました。

例えば、帝人と米ゼネラル・モーターズ(GM)は提携して、車体の構造材と呼ぶ骨格部分を鉄から炭素繊維に置き換える技術を開発中。GMは2015年以降に発売する量産車種への採用をめざす
とされています。

2013年3月の日経新聞には、帝人は約300億円を投じ、米国で高機能な炭素繊維の工場と、生産した炭素繊維と樹脂を組み合わせて構造材を製造する工場をそれぞれ新設すると報じられました。


本日の記事は、今まで個別企業が進めてきた開発行為を集約して、政府が5~10年間で数百億円の資金を支援して国家プロジェクトとして、炭素繊維の自動車車体などへの使用を実現することについて書いています。

素材は、国内企業が最も得意とする事業分野の一つであり、世界市場で競争力をもっています。その中の次世代素材の一つである炭素繊維をオールジャパン体制で量産品への大量使用を実現することを目指します。

東レや帝人などの国内企業は、炭素繊維の有効性はボーイング787などへの大量採用で証明しています。

今後、加工技術の多様化と低コスト化を進めれば、自動車だけでなく他の商品にも、強度を確保・強化した軽量化素材として使用されていくのは、確実です。

炭素繊維は、現在鉄が大量に使用されている分野や商品・装置の分野で使われるようになるとされます。

現在の炭素繊維の使用量は、2011年度で年間4万トンです。自動車車体や主要部品に使用されますと、2020年くらいで自動車向けに年間数万トン使用され、他の使用用途を含めると年間消費量が14万トンくらいになるとの試算があります。

この試算が正しければ、炭素繊維の年間消費量は、現在の3倍以上になり、量産効果が生まれることは可能です。

また、炭素繊維の難しさは、加工技術だけでなく原材料づくりにもあります。大量の原材料を確実に作るには、更なる技術的ブレークスルーが必要になります。

それらの難しさを東レや帝人と、三菱レイヨンなどの素材企業と、東京大学・名古屋大学、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、三菱自動車などの自動車メーカーも加わって、共同で開発・商用化を進めます。

今までの国内企業の地道な技術・実用化のノウハウ蓄積がありますので、政産学連携の大型プロジェクトの成功する確率は高くなります。

政府は、炭素繊維の実用化・普及を推し進めるために、関連企業の開発・設備投資などに助成金を出すだけでなく、減税なども積極的に行なっていくことを期待します。

炭素繊維の開発・商用化には、多額の資金が必要になるため、当面中小企業の出番はありません。上記オールジャパン体制で炭素繊維の技術的難易度が下がり、低コスト化が進めば中小企業がさまざまな部品や商品に使えるようになります。

国内企業の炭素繊維の競争力をさらに高めて、世界の環境やエネルギーの改善・効率化に貢献することで、世界市場で大きな需要を見込めます。

また、当該技術の海外への流出を避けることは必須です。国内企業が炭素繊維のノウハウ蓄積・発展を確実に行なって、競争力を保持しながら新規使用分野を開拓していけるように、政産学で連携していくことがも必要であり、重要になります。

炭素繊維の今後の事業拡大の動きに注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 


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日経メカニカルファン

 最近、トライボロジー分野で久保田邦親博士が炭素結晶の競合モデルという鋼と油の相互作用を論じた画期的な摩擦理論を提案された。これによると、境界潤滑下で発生するダメージは油が変質したダイヤモンドであり、極圧添加剤はそうならずに結晶の層状潤滑性の高いグラファイト層間化合物というボールベアリング状の結晶体を作るからだという。この専門の人間ならストライベック線図を思い浮かべていただきたいが、そこには流体潤滑(固体同士の非接触)と境界潤滑(固体同士の接触)というもの中間に両者中韓状態を設定し潤滑ー摩擦の全体像を示そうとしてきた。しかし流体潤滑理論の方ばかり精密化が進行して、境界潤滑は理論と呼べるものもなく、いわば航空機で例えると双発機の片側のエンジンみで滑空しているような状態だった。両側がちゃんと使えるようになると、もっと変幻自在にこの分野が発達する可能性を感じた。
 以前より、軽量化と境界潤滑は機械の進化のボトルネックと考えていたのでいろんな分野で新たなブレークスルーが行われているのを感じている。
by 日経メカニカルファン (2015-08-23 10:09) 

松江

 日立金属の冶金研究所の方ですね。
by 松江 (2015-09-14 08:05) 

低粘度オイル開発者

 久保田邦親博士を中心とした研究チームの成果とお見受けしました。トライボロジーに詳しい友人に聞くとノーベル賞級のダイヤモンド理論を完成させたらしいですね。祝福します。
by 低粘度オイル開発者 (2015-10-20 18:39) 

ケンイチ

 私の計算では燃費は低粘度オイルと併用すると2倍ぐらいになると思われます。日本が自動車最強国になるチャンスだと思われます。
by ケンイチ (2015-11-03 22:57) 

S-MAGICファン

 ボールベアリング状の結晶ってグラファイト層間化合物(GIC)っていうらしいですね。
by S-MAGICファン (2015-11-15 17:49) 

CCSCモデルファン

 地球環境に対する真水の直球勝負の機械工学理論は感動しました。
by CCSCモデルファン (2017-07-17 11:29) 

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